たとえ、ずっと、平行だとしても

庄野雄治さんの小説短編集『たとえ、ずっと、平行だとしても』のブックデザインをしました。
きれいな本ができた。
取次や委託、広告という制約に縛られない流通を押し通してくれた著者のaalto coffeeの庄野さん、音楽レ一ベルの中に文庫部門を作ってくれた竜樹さん。
そんな方々のおかげでカバ一から解放されたありのままのデザインが実現した。
校閲の牟田さんにもいろんなことを教えていただいた。
勤めていた頃はあまりブックデザインの仕事は無かったものの、だんだんと印刷所の方と密接に関わりながら本を作れるような環境ができてきて、柴田元幸さんのCDの翻訳ブックレットなどで小説の組版のことを勉強する機会をいただいたり、今ではずいぶんとブックデザインに関わるようになった。
イラストレ一タ一として装画を画稿する際に、デザイナ一の方に多くの話を聞けたのも、有り難い経験でした。
良くも悪くも、受注仕事は自分が受けれる仕事の数が決まってくる。限られた時間の中で、自分が誰のために手を動かしたいのか、どんな態度で物が作りたいのか、物質として表現できた仕事になったような気がする。
外側と内側が相思相愛で同じグリッドで共有されている全貌や、フォントのにじみ、掠れ、退色や日焼けの許容、文字の置き方。
一つ一つのことが、装丁のディティ一ルにありありと表れているものになったのではないだろうか。
こうやって日々を過ごせていけることに、感謝するばかり。
まだまだ学ぶことはたくさん。
かわいくていろんなところに置いて写真を撮ってしまう。